19.胸騒ぎ
2003年2月4日
「おい!イチ!元気か!おまえが元気にしてるようで、俺もうれしいよ。じゃあな」
あ!Oさんだ!また来てくれたんだね。うれしいなぁ。この前来たのはいつだったっけ。僕のことちゃんと覚えててくれたんだね。園田ではお世話になりました。お別れする時はちょっと寂しかったけど、今はオーナーさんに可愛がられて、僕も可愛がってやって、お互い楽しくやってるよ。また遊びに来てね。きっとだよー。
−訳者注:訳者の私は、直接ご本人にお会いしていないのですが。というのも、平日に乗馬クラブに来られるようなので、土日しかクラブに行けない私には会うチャンスが無いのです。平日来られている会員の方からの伝聞ですが。背の低い男の方が、マイヨジョーヌの馬房を訪れたとのことでした。様子を伺うと、マイヨジョーヌに話しかけているし、マイヨジョーヌが元気でいることに感激しているようだったそうです。1度ならず何度か乗馬クラブを訪れてマイヨジョーヌに会っていくそうです。
元調教助手の方か、騎手の方かは定かではありませんが、私はO騎手ではないかと思っています。いつか実際に会ってご挨拶し、園田時代のマイヨジョーヌのことを聞いてみたいと思っています。ちなみに、イチとはマイヨジョーヌの競走馬名バルセロナイチの愛称です。
2003年3月27日
僕の面倒を見てくれてたスタッフのKWくんがテンキンだって。またまたまた。何やらセンダイとかいうところに行っちゃうそうだよ。寒いところだって聞いたけど、僕の故郷に比べてどうなんだろう。僕は寒いのは強いけど、KWくんは寒いのいやだって言ってたよ。彼は結構僕のことを助手任せにしていて、自分ではあんまり僕の面倒を見なかったから、オーナーのSKさんやSSさんに叱られてた。いざ交替となると寂しいねえ。彼も若いけど持病があるから気をつけてねって、言っておいたよ。後任は、乗馬はしなくて面倒を見るだけど、女性のITさんで決まったようだ。ITさんよろしくね。
−訳者注:この10年で6人目のスタッフ交替です。まあ5回で平均2年強は普通のサイクルでしょうか。女性らしく細かいところに気付いてくれて、責任感も強い方なので是非にとお願いして担当になってもらいました。マイヨジョーヌも当年15歳、病気や怪我が心配ですので。
2003年4月
何だか分からないけど、モヤモヤ、イライラ、、、何か胸騒ぎがするんだけどナ。誰か、いないのかなあ、、、誰か気が付いてくれないかなあ、、、誰か、、、何もなければいいんだけど。おかしいなあ、、、この変な気持ちは一体なんだろう、、、オーイ、オーイ、誰かあ・・・大変だよーーー!
−訳者注:伝聞ですが。マイヨジョーヌが馬房の中でウロウロして、しきりに外の人間に注意を喚起するように、低く啼いたり、騒いだりしていたそうです。ようやくおかしいと気が付いた人たちが、「これは!疝痛か!」と、あわてて担当スタッフに見てもらったところ、何でもない様子。どうしたのか不思議に思い、ふと右隣の馬房をのぞくとその馬の様子がおかしい。雄馬のAロンくんが肢を震わせていたそうです。右後肢が腫れて、太くなってしまっていました。「フレグモーネ」という病気です。
フレグモーネは傷口からばい菌が入って炎症を起こして腫れる病気です。痒いこともあるけど、通常発熱や痛みはないといわれています。これがひどくなると大根のように腫れてしまうこともあります。Aロンくんの場合はこの時は軽かったものの、初期の処置が悪かったのか、だんだんと腫れがひどくなり、大根のように腫れていきました。おまけに腫れた足首 (球節のところですから本当は指の関節にあたります)が固まってきて、曲げられなくなってしまいました。つまり、寝そべるのも起き上がるのも辛い状況になってしまいました。当然、歩くのも不自由になりました。マイヨジョーヌが、そういう隣の馬の初期状態をどういうわけか察知し、騒いで警報を発したというのです。不思議な事件でした。虫の知らせ、シンクロニシティというやつでしょうか。
追記:その後、Aロンくんはオーナーの意向で長野の牧場に移動しました。そちらで懸命のフレグモーネの治療をして、ほどなく放牧場を自力で歩けるまで回復したそうです。しかし、年齢もあってか約1年後に亡くなりました。初期治療の大切さを思い知らされた件でした。