17.興奮しちゃった

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2002年2月26日

悠々と放牧ですまた、今年も僕の誕生日がやってきました。去年から馬の年齢表記が変わったので今年で僕は13歳。 オーナーのSSさんSKさんとも、もう9年の付き合いかあ、、、長いねえ。長い割には2人とも乗馬は上達しないなあ(なんて陰口叩いたら叱られるかな。まあ、わかんないからいいや…ハハハ)

-訳者注:ばかもん!ばれてるよ(ー_ーメ)

毎年の恒例で、今年もSSさんSKさんがクラブにやってきてくれた。今日はクラブが休日なので、僕たち馬は厩舎でお休みだ。1日中馬房に閉じ込められているんだよ。休日でも、当番で日直のクラブの職員の人が必ず1人いるので安心だけどね。

今日はOさんという女性の指導員の人が当番。この子もやっぱり馬を大事にしてくれるよ。休日などは、クラブの広い馬場を適当に囲って、馬たちを放牧してくれる。放牧といっても、オーナーさんがついている馬は勝手に放牧して怪我でもしたら、後々大変だから無断ではしないよ。クラブ所有の馬たちを放牧するんだ。だって、クラブ所有の馬たちは普段ずっと乗馬練習に使われて、放牧してもらう暇無いもんね。 休日くらいしか放牧することできないもんね。で、ひるがえって僕たちオーナーがついてる馬は休日は大体馬房に入ったままなんだ。でも、今日はお二人が来てくれるので、僕も狭い馬房から開放されるなあ。 ヤッターァ!

りんごは好物お二人がクラブにやって来たのは午後になってから。もーぅ、遅いんだから。早速、僕を馬房から出して、僕を放牧させるって言って洗い場に連れて来てくれた。洗い場は馬場の目の前にある から、馬場をずーと見渡せる。馬場を見ると、そこにはOさんが放牧に出していた先客、妙齢の牝馬3頭が放牧に出されていたんだ。栗毛のDルナちゃん、黒鹿毛のSアンナちゃん、鹿毛のSリアちゃんだよ。ぼ・ぼく、セン馬 なんだけど、なぜだか胸がどきどきしてきちゃって、おまけに鼻水まで出てきちゃった。

馬の放牧はセン馬と牝馬といってもさすがに、一緒の馬場には放牧できないので別々の馬場に放牧するんだ。でも牝馬3頭は同性だから3頭一緒だったけどね。僕はSKさんに連れられて、別に区切った馬場に行こうとしたんだけど、なんだかドキドキしちゃって力が入ったんだよ。それで、SKさんを引っ張ったり押したりして、てこずらせてしまったんだ。とうとうそれを見ていた指導員のOさんが牝馬たちを放牧馬場から引き上げて、洗い場に戻してしまった。一緒に放牧場で遊ぼうと思ったのに残念。

-訳者注:私は当事者なんで良く覚えていますよ。マイヨジョーヌもやっぱり男の仔でした。普通、牡馬 と牝馬は牧場でもどこでも近づけないよう気をつけます。程度の差はありますが牡馬が興奮して手に おえなくなりますから。所謂、馬っ気ってやつを皆さんもご存知でしょう。普段、休日などにマイヨ ジョーヌを放牧する時はお隣は大抵セン馬です。まず、牝馬が隣に来ることはありません。 また、洗い場で隣に牝馬が来てもマイヨジョーヌは特に変わることなく平気です。それが、この日は 異常に興奮していました。さすがに牝馬が3頭も目の前に来ると本来の野生が蘇ってくるのでしょうか。 興奮して鶴首(あごを引いて、まるで鶴のような姿勢になるのでこう呼びます)になって、手綱を 引っ張り、牝馬の方に寄って行こうとし、私と押し合いへしあいになりました。おまけに、鼻水を たらして目つきも怖かった…マイヨジョーヌもやっぱり男の仔でした。


2002年3月24日

僕は普段、運動はオーナーのSSさん、SKさん達のマイペースでされるんだ。他の馬達とは別々に1頭で、言ってみれば’ちんたら’と運動するんだよ。で、時々指導員さんの気が向いたときに障碍のジャンプをやったりするんだ。 でも今日は、SKさん何を血迷ったのか、お誕生日にお世話になった女性の指導員Oさんのレッスンに飛び入り参加だって。 まったく、、、迷惑な話だよ。駈足レッスンだって???僕にそんなもん必要ないって!もーぉ、いい加減にしてくれないかなあ。レッスンは45分もあるんだよ。馬場は2−3日前からの雨で脚を取られる馬場だし全然いいことないよ。僕って縛られて運動するのって嫌いなんだよね。

最初は我慢して一生懸命運動していたけどね。だんだん嫌になってきちゃった。今日は天気が悪かったのでクラブも暇で、レッスン参加者は僕とあと1頭だけ。馬が少ないとレッスンはきついんだよね。 一生懸命やらないと直ぐ指導員の檄が飛ぶし、運動もガンガンされるし、、、普段SSさんなんかだと 運動が嫌になったら首振ったり、ちょっと横っ飛びしたら怖がって運動止めちゃうんだけど、SKさんだとそうはいかないんだよな。どうしよう、、、と考えているうちに、さすがに普段の楽な運動に慣れた体にはきつくなってきた。とうとう、脚がもつれて前のめりにこけちゃったよ。でも、これでSKさんはレッスンを諦めて止めちゃった。シメシメ。

-訳者注:いわゆる、「人馬転」ですが、これは以前にもありました。今回は前兆もなく、突然前のめりに倒れたので、一瞬、マイヨジョーヌが心臓麻痺でも起こしたのかと、私は倒れながらも冷や汗をかいていました。でもマイヨジョーヌが直ぐに立ち上がったのでほっとしました。一体なんだったのでしょう。馬はけろりとしたものでした。


2002年3月28日

乗馬クラブではオーナーさんがついている馬たちはオーナーさんが来ない時には運動できないので、 指導員助手を設けて、この人たちが僕たちの運動をしてくれることは前にも話したかな。そう、それで今日も指導員助手のYちゃんが僕に乗って運動してくれるんだ。なんと、今日は指導員のKWさんのレッスンに出るんだって!えーまたレッスンかい!?いやだなあ。

Yちゃんは僕のこと「可愛い、可愛い」といって一生懸命世話してくれるのはいいんだけど、やっぱりレッスンはいやだなあ。45分もやるんだもの、参っちゃうよ。どうにか途中でやめる方法はないかなあ、、、 そんな事を考えながら、ずっと考えながら、脚下を見ながら考えていたら突然脚がもつれてしまった。 やっちゃった!また人馬転だよ、、、でも、こ・れ・で・レッスンはお仕舞い。シメシメ。

レッスン途中で止めちゃったYちゃんは悲しそうな顔をして、「どうしちゃったのマヨちゃん。大丈夫?」 と声をかけてくれた。やさしいなあ。ゴメンネ。仕方なかったんだョ、、、やさしいYちゃんだけど、 指導員のKWさんに「どうして人馬転なんかするの。オーナーさんには黙っていてやるから、しっかり しなくちゃだめだよ」と怒られていたよ。悪いことしちゃったかな。

悪かったなあ、Yちゃん。今後もよろしくね。

-訳者注:私は絶対わざと転んだのだと思っています。マイヨジョーヌは確かに一般の馬よりも強い意志と知恵を持っているようです。自分が運動したい時は一生懸命しますが、飽きてくると途端に首を振ったり、跳んだりしてもうやめようよと意思表示をします。騎手が何もしないでいると勝手に馬場を出ようとします。跳ねて馬場を飛び出し自分の厩舎に一人で帰ったり、直前に使っていた洗い場に戻ったりしたことは1度だけではありません。どうしたらレッスンをやめられるか、知恵を絞って考えているのでしょう。でも自分の意志をこんなに持っている馬も珍しいと思いますよ。退屈しません。


2002年5月4日

乗鞍をバックになんだかこのところクラブに人が多いなあと思ったら、左隣の厩舎のDヤングちゃんが僕に教えてくれた。人間世界はゴールデン・ウイークといって世を挙げてお休みなんだって。それにしてもうちのSSさんSKさんは来てくれないなあ。どうしちゃったんだろう。賑やかになってからもう1週間くらい経っているのに。寂しいなあ。

なんてこと考えていたら、お二人が夕方やって来たよ。わーい!うれしいなあ。早くリンゴ頂戴よ。

SSさん:「マヨちゃん!元気だったぁ?私達ちょっと遊びに行っていたの。留守してゴメンね。はい、これがあなたのお友達のキーちゃんよ。乗鞍岳に上ったオカメインコってこの子くらいかもね。どーぉ、可愛いでしょう!?」

と言って見せてくれた写真が→。なんだかちっちゃくて黄色いカラスだなあ。僕って鳥で知っているのは乗馬クラブでいたずらするカラスくらいしか知らないんだもん。

SSさん:「実は今日ねえ遅くなったのは竜ヶ崎に行ってきたのよ。新井さんの牧場のあなたの後輩がそこに居るの。去年、北海道に行った時に休養中で会ったんだけど、とうとう競走馬を引退して、そのクラブに移ったのよ。元気にしていたわ。」

-訳者註:昨年、チャンピオンズファームで会ったブレイクショットのことです。わずか半年で、もう障害競技にデビューしたとのこと。障害も1m以上を軽く跳んで結構優秀だそうです。60歳過ぎのオーナーさんがついてよく可愛がってくれていますので安心しました。


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