16.馬装

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2001年4月

ワンコとプロテクター裏堀り今日は乗馬の馬装についてお勉強だよ。乗馬を始めるにはまず、僕たちお馬さんを馬房から連れ出します。僕は素直で反抗しないから大丈夫だけど、中には食事中やご機嫌が悪い馬だと人間が無口を持って馬房に入ると反抗してお尻を向けたり、さらには後ろ肢で蹴ろうとする馬もいるから気をつけてね。

無事に馬房から馬を出して洗い場(馬装場、馬繋ぎ場とか色々な呼び名があるけど)につないだら、先ずは蹄の裏堀り。蹄の底に溜まった厩舎の敷き床のおがくず・引き粉をテッピという金具で掻きとってきれいにするんだよ。引き粉が入ったままだと馬が歩行するときに邪魔になって歩きにくいんだよね。もっとも、歩いているうちに取れちゃうけどね。

次は、プロテクターの装着。プロテクターは乗馬馬の肢の保護具です。前肢用と後肢用があるから付け間違わないように。右左もあるから間違わないように。初心者の人が間違ってつけてるのを時々見るけど、まあ間違っても実害は無いと思うけどね。プロテクターは特に駈足(カケアシ)の時に前肢と後肢がぶつかって怪我をするのを防ぐためにあるんだ。上級者になるとワンコというものを着ける場合もあるよ。ワンコは障碍競技や練習の時にバーに蹄が当って損傷しないようにということと、もちろん後肢が前肢に当って怪我することを防ぐ意味もあるよ。

競馬を見ている人は分かると思うけど、中央競馬で走る馬は基本的にはプロテクターは着けません。地方競馬だとよく着けている馬を見るけど、どうだろ?ダート競馬だから芝のスピード競馬がある中央とは考え方が違うのかな。そこらへんは僕も知らないや。中央競馬はやはり見た目が大事なのか、プロテクターでなくてサポーターを肢に巻いているよ。筋肉の保護と怪我の保護にも有効だろうね。乗馬クラブでも運動量の多い馬や肢の弱い馬はサポーター(肢巻きと呼んでるよ)を巻いてるんだよ。

胸がいだよ腹帯だよゼッケン下+パッド+鞍次につけるのは鞍だよ。一般的には、ゼッケン+パッド(鞍の緩衝材)+鞍下ボア+鞍という順番に重ねて鞍を着けるよ。鞍は腹帯(ハラオビ)という器具で馬のおなかをぐるっと回して固定する。この腹帯をしっかり締めないと鞍ずれがおきて、馬の体に擦り傷なんかができてしまうから大事なことだよ。擦り傷は特に、き甲周辺にでき易いから気をつけてね。鞍に着ける補助具として、胸がい(蔵が前後方向に動かないよう補助する器具)、マルタンガール(馬の首が上がらないよう矯正する器具)など色々あるよ。鞍には3種類合って、障碍用、馬場用、総合用の3種類。自分の乗馬スタイルに合わせて選んでね。ちなみに僕のオーナーは総合用のオールマイティの鞍をもう8年も使ってる。先日、障碍鞍を買おうかなー、なんて言ってたけど、僕に相談もしないで買うつもりだろうか。

最後が、頭絡(トウラク)だ。これはハミを装着して、馬の頭に取り付けて、手綱をつないで乗馬で馬をコントロールする大切なものだよ。僕たち馬はこのハミが大嫌い。だって口の中が気持ち悪いんだもん。それを知ってるからか、僕のオーナーのSKさんは乗馬を始める直前まで頭絡は着けないし、乗馬が終わったら真っ先に頭絡を外してくれるんだ。洗い場で見ていると、たまに真っ先に頭絡を馬につけてる人間がいるけど、何考えてるんだかって思う。お馬さんが可哀想だなって。 これで馬装は完成。いざ、出陣!

乗馬が終わって帰ってきたらまず、頭絡を外してね!


2001年5月

運動中前回に引き続き、乗馬が終わった後のお手入れについて、僕の希望を交えて教えちゃう。

乗馬が終わったら直ぐに、頭絡を外してください。馬は大歓迎です。次は鞍だね。はい!はずしてーーー。これで馬は肩の荷が下りて、終わったーーーと大喜びです。この後、プロテクターを外して、蹄の裏についた泥を掻き落とします。これで乗馬の装備を全部外しておしまい、と思ったら大間違いですよ。

汚れた肢の手入れと、運動して汗をかいた馬体の手入れ、運動後のケアがあるんだよ。これを忘れないでね。まずは運動後のケア。運動した馬はほぼ皆、喉が渇いているから馬装を外した後、先ず最初に水を飲ませてあげてください!

肢の手入れ。これは蹄の裏の泥を書き出した後、バケツに汲んだ水とタワシを使って蹄に付いた泥をきれいに洗い流してね。肢の下半分、特に球節付近の汚れも落としてね。この時、肢に怪我をしていないか注意すること。そのままほっておくとバイキンが入ってとんでもない事にならないように。僕の場合、SKさんがいつも2.0の視力で見てくれるから安心なんだ。怪我をしてると、チューブに入った青い消毒薬を付けてくれるんだよ。

馬体の手入れは、普段と運動後では違うから今回は運動後について。運動後は夏場だと汗をかいているから、扇風機を当てたり、水をかけたりするよ。水をかけたら乾くまで待つしかないけど、普段は濡れたタオルなんかで汚れや汗を拭いてくれればOKだね。顔や馬体の汚れたところをチェックして拭いてください。そうしているうちに肢も乾いてくるから、お馬さんを馬房に連れて行ってくださいね。この時注意して欲しいのは、肢が濡れたまま厩舎に入れないこと。良く乾かしてか厩舎に入れてください。そうしないと、ケイクン(「6.再会」の日記ででお話しました)になっちゃうのです。一度できると、しつこくてなかなか直らないからね。おまけに、見た目も良くないし。ケイクン作ってしまったら、オーナーや担当者の器量が疑われますよ。注意してね。

丸洗いは気持ちいい!ゴックン、ゴクゴクここまではクラブの会有馬たちのお手入れの内容だよ。僕たちオーナーが付いている馬は馬装を外した後、別コースになるよ(笑)。プロテクターを着けたまま、馬場に放されて、放牧・砂浴びタイムだよ。砂浴びは馬にとってとてもリラックスできるんだ。オーナーの馬ばかり優遇されて、、、なんて思っていない?心配ご無用、会有馬はレッスン終了後や、クラブの休日などに放牧されてリラックスさせられているんだ。

砂浴びした後は、洗い場で丸洗いされるんだよ。丸洗いでは、タテガミやシッポをシャンプーするオーナーさんもいるよ。これって気持ちいいんだよね、僕も大好き。いい臭いがするし。あとは会有馬と同じで、肢の手入れ、馬体の手入れをちゃんとしてくれればOK。

最後に、蹄に蹄油(テイユ)を塗って下さい。これは水洗いした蹄に油分を補給して、蹄の割れを防ぐためだよ。そうして、厩舎に帰れば楽しい飼い葉タイムってね!


2001年9月

使い方:気持ちいーよボディゴムブラシ今日は朝から雨で乗馬取りやめ。僕のオーナーは強い雨が降ったら乗馬はしません。前日の雨で馬場がぬかるんでいたら、やっぱり乗馬はしません。僕にとっては非常に助かる人たちだ。SKさん、SSさんが僕のオーナーになった最初の頃は、僕が不良馬場が苦手だって知らないもんだから、ずいぶん馬場が悪くても乗馬をしていたんだ。そのうち、僕が不良馬場で足を取られたり、滑ったりするということを、乗馬した指導員や自分の体験から悟ったらしく、最近では無理使いしなくなった。SSさんなんか最近は、「やったー今日は雨ね。引き馬しましょう」なんてニコニコ笑っているくらいだよ。

そういうわけだから、今日は引き馬の後お手入れだ。これが、僕にとっては気持ちいいんだよね。ボディゴムブラシというゴムで出来た器具を使って全身をやさしくマッサージするようにこするんだ。顔面用にゴムの足が細いものもある。これを使ってこすられると、体のツボにはまると何とも言えない快感が全身を走るんだよね。その上、このゴムブラシで体をこすると、無駄な冬毛や体に付いた垢がどんどん取れる。あーカイカン。

−訳者注:ボディゴムブラシで全身をこすってマッサージをすることは、マイヨジョーヌが言っているように冬毛や垢を取り除くという目的があります。それだけではなく、さらに重要なことはこれによって「新陳代謝」を良くすることにあるのです。全身のマッサージは馬の皮膚を刺激して血行を良くし、ひいては新陳代謝を促進して強い体を作ることを考えているからです。事実、マイヨジョーヌがこの8年ばかり病気らしい病気をしていないということがその証明になっているのではないでしょうか。少なくとも私はそう信じています。ボディゴムブラシを使うよう指導してくれたのは、マイヨジョーヌを持った時の最初のクラブの所長さんでした。これからも、専属マッサージャーとしてマイヨジョーヌにお仕えするつもりです(笑)


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