12.落鉄
1997年1月5日
今年で僕も9歳になりました。人間達は「1年の計は元旦にあり」なんてことを言って、年が変わると新たな気持ちでこの1年を過ごしていこうとするんだって?僕もこの1年を無事に過ごそうと誓ったんだけど...
実は、今日やってしまいました。SSさんを乗せて「人馬転」を。いつもと変わらず運動をしていたんだけど、駈歩(カケアシ)してたら前肢がもつれちゃって前のめりに転んでしまったんだ。僕も突然のことで呆然としてしまって、暫く横たわっていたんだ。すると、SSさんがビックリした様子と泣きそうな声で「マヨちゃん大丈夫?」と僕に声を掛けてくれた。その声ではっとして立ち上がったよ僕。SSさんは、「一瞬骨でも折れたのかと思ったわよ...」と泣きべそをかいていた。ゴメンナサイネ。びっくりした?
とっさにSSさんをかばったのかな、SSさんは何ともなかったけど鞍に付けている鐙(アブミ)がぐにゃりと曲がってしまったよ。あんなに硬い鉄でできているのに曲がってしまうんだから。僕の体重で押しつぶしたのかなあ。ちょっとダイエットしなくちゃあいけないかな...ハハハ
1997年6月
僕たち馬は蹄鉄を履いていることは皆さんも良く知っているよね。競馬を見る人なら分かると思うけど良く、「落鉄」したって聞くでしょう。それが僕たち乗馬の馬にもあるんだよ。「落鉄」は文字通り蹄鉄が外れて取れちゃうことだよ。
今日は雨でぬかるんだ馬場で運動していたら僕の蹄鉄が二つも外れてしまったんだ。蹄鉄が取れたら着ければいいじゃん、なんて思うでしょうけど、着けるのは素人ではできないよ。ちゃんと装蹄師さんが付けてくれる。乗馬クラブでは装蹄師さんが常時いるわけじゃないから、クラブのスタッフが見よう見まねで蹄鉄を付けることはできるんだ。でも新しい蹄鉄を叩いてきっちり装着することは出来ないから、外れた蹄鉄を付けるだけだけどね。
ということは、外れた蹄鉄を探さなきゃならないね。この日は雨で馬場がグチャグチャだったから、SKさんとスタッフが血眼になって馬場を探し回ってようやく探し当ててくれた。それで、もと通りになって安心。蹄鉄が外れたらそれで運動はお終い。足を洗って付け直さなきゃならないからね。やったー!ラッキー!
−訳者注:馬の蹄は1ヶ月に約1センチほど伸びます。伸びた部分の蹄は小さな鎌のような器具で切り取ってから、やすりで削ってきれいに整えます。そして、蹄鉄に焼きをいれて熱し、蹄鉄を蹄の裏に押し当てて密着させます。その後、蹄鉄の穴に鉄クギを6本程度打って蹄に固定します。このクギは蹄の知覚神経が無いところを選んで打つそうです。装蹄師さんのそのような作業を見ていると凄いなあと関心させられます。
蹄鉄は馬が運動すると、少しづつすり減ってしまうので、約1ヶ月に1回程度取替えます。休日に乗馬クラブに行って、新しい蹄鉄が着いているマイヨジョーヌの肢を見ると新しい靴を履いたときのような新鮮な気持ちにさせられます。