7.唯我独尊

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1993年10月

僕のオーナーさんは最近、障害の練習を始めた。でも、まだ僕に乗って障害を跳ぶ勇気はないようだ。会有馬で練習している。まだまだ初心者だから、へっぴり腰だよって、僕の隣の馬房のAロン君が言っていた。僕はまだ、直接見ていないのでわからないけど。今度SSさんが僕に乗っている時に、SKさんが障害練習をしているところを見てやろう。上手く時間が合えばいいんだけどな。

最初はクロスバーといって障害のバーを×の字にして真ん中を低くして跳ぶんだ。そうして障害を跳ぶリズムが分かってきたら、だんだん平行棒にして、高さを上げていく。でも1mの高さを飛べるようになるには随分練習しなければならないよ。1年くらいはかかるんじゃあないかな。毎日毎日練習すれば上達も早いだろうけどね。要は練習だね。

馬にも色々なタイプがいて、簡単に跳んでくれる馬、障害の前で立ち止まる馬、障害の前でコースを変えて跳ばない馬、いろいろだ。そんな馬達を上手くコントロールして跳ばせるのが騎手の役目なんだよ。脚の扶助、手綱、声による呼びかけなど、いろいろ工夫しなければならない。馬の気分を損ねないようにするのが大切なんだ。


1993年11月

あれれ、今度は三重の乗馬クラブの所長さんまでやってきたよ。僕を乗馬として買ってくれた人だ。やっぱり、命の恩人って言わなきゃならないのかな?でもテンキンだって。なんだ、皆分かってたのかなあ。ひとりで寂しい思いをして何だか損しちゃったよ。三重のスタッフを何人か連れて来たし、これからも何人かやって来るって噂だよとSKさんが言っていた。懐かしい顔が揃って、何だか元のところに居る気分。チバに居る気がしないなあ。


楽しい、お誕生日1994年2月26日

僕も今年で6歳、満で5歳になった。SSさんSKさんは今日休みを取って、わざわざ僕に会いに来てくれた。所長さんや指導員の人とも記念撮影したし、大好きなりんごも持ってきてくれたよ。ありがとう。

何か白い四角いものも持ってきてくれたけど、口に入れるのが怖いので吐き出しちゃった。変なもの食べさせないでよ、SSさん。でも、SSさんは「マヨちゃん。これは角砂糖だよ。あなたこれ嫌いなの?へんな馬ねえ。他の馬はみんなおいしいって食べてくれるのに。ホントに変な仔ねえ」。

カクザトウ?なにそれ。僕そんなもの食べた事ないよ。いやだあ。それ以来SSさんは二度とカクザトウを持ってこなくなった。ああよかった。僕はりんごがいいや。


1994年4月

沙浴びは気持ちいいや僕の面倒を見てくれるOKさんは、どうも僕が怖いみたいだ。ちょっと、尻っぱねをしてやったら他の男の指導員さんに助けを求めていたもの。僕も気難しい所があって、いったん気に入らない事があると、へそを曲げて、人の言う事を聞かないんだよ。だって、いい加減運動したらもういやだって態度で示しているのに、いつまでも運動しようとするからさ。馬が尻っぱねをするのは、ホントに怖い事があった時と、気分が乗らない時。今日は気分が乗らないからチョット意地悪してやった。

どうも僕は、みんなから気難しい馬だと思われているようだ。みんなバカだなあ。僕は僕の流儀を貫いているだけさ。誰が僕にとって利益をもたらしてくれるかを考えているだけだよ。最近、SSさんは僕がSSさんを見ると鳴いてくれると喜んでいるよ。一番役に立つ人だから鳴いているんだけどね、実は。

SSさんSKさんが休日に来ている時は、その他の人は邪魔なだけさ。だって、人参とりんごをくれるのは二人だもの(^^。他の人が近づいてきたら威嚇して追い払うだけ。そして平日は指導員のOKさんが僕の仲良し。それ以外の人は邪魔者、無視するだけだよ。


1994年5月

去年の8月以来、僕の面倒を見てくれていたOKさんがカナザワにテンキンだって。寂しくなるなあ。その後がまは、今度は男の子だ。名前はYY君。まだ20歳になってないのかな?でも、乗馬技術はしっかりしている。体重も軽いし、僕にとっては大歓迎。YY君よろしく頼みますよ。


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